ブルース・スプリングスティーン

ブルース・スプリングスティーン『DEVILS & DUST』私的全曲レビュー

今回の記事はブルース・スプリングスティーンが2005年に発表したアルバム「DEVILS & DUST」についてです。2002年発表の「THE RISING」以来3年ぶりの作品でいわゆるアコースティックアルバム・フォークアルバムになります。


デビルズ・アンド・ダスト

本作は前作同様、プロデューサーはブレンダン・オブライエン氏で今回はベースも担当し、他はドラムのスティーヴ・ジョーダン氏とボス氏というコンパクトな編成を基本にしています。

DEVILS & DUST 全体的な感想

『DEVILS & DUST』2005年発表

タイトル・ジャケット共にダークに雰囲気が溢れています。しかもリリース当時、事前情報で本作はいわゆるボス氏印のフォーク系のアルバムだと知っていたので購入するか否か、少しだけ躊躇したのを覚えています。

しかし実際に聴いてみると、それほど暗さは感じられません。

ただ当然のことながら英語詩のために歌詞をダイレクトには理解出来ないので、単にBGM的に聴くというのは、英語が分からない日本人の方にとっては少々ツライものがあるかも知れません。

では、全編同じトーンでダークに進行して行くのかと言うと必ずしもそうでもありません。オープニング曲はタイトル曲の「DEVILS & DUST」でダークに幕を開けますが、2曲目はロック調の曲になっています。

アルバムの最初っから終いまでと言う訳ではありませんが、ほぼこの様にダークorスローソングの次には軽快感のある曲が配置されている印象です。

ですので、いわゆるボス氏のアコースティック・フォーク系のアルバムが苦手な方でも、意外と途中で挫折せずに聴けるのではないかと思います。

DEVILS & DUST 各曲感想

1. Devils & Dust

本作のオープニングを飾るタイトル曲です。1曲目ですしタイトル曲ですからコアなファンでなくても受け入れられる曲かと思いきや、タイトル通りのダークな曲です。

基本、ボス氏のハーモニカを用いた弾き語り曲で、途中から控え目にバンドがサポートしています。

それなりにメロディは立っていますが、この曲のロックver.を聴きたいと思うほどでもないので、うーん…オープニングから正直まあ、退屈です。

英語が分かればまた違った感想になりそうですが、私的に言語の壁の大きさを感じましたね。

本作はいわゆるフォーク系のアコースティックアルバムですが、そのフォークソング然とした曲の中では一番メロディやサウンドの完成度が高く、アルバムタイトル&オープニング曲に起用されたのは理解は出来ますね。

歌詞は自身の神への忠誠心が揺らぐことに対する葛藤を歌っている様です。

正義や信仰や恐怖が時に人を死に至らしめてしまうという現実。ふと気付いたら自分の心は悪魔と砂ぼこりまみれだったという…

2. All The Way Home

ほどほどにスピード感のあるフォークロックです。シンプルなアレンジですがエレキのリフが軽快感を醸し出しています。

全体の雰囲気としては、記憶が曖昧ですが1992年に発表した「HUMAN TOUCH」「LUCKY TOWN」あたりに収録されていそうな曲です。

とにもかくにも2曲目にこの手の曲が配置されていたのにはホッとしました。2曲目も1曲目と同じ感じだったら離脱していたかも知れません。

歌詞は、去って行った女性への想いを歌っています。自分のダメ?さ加減を十分に認識している様で、「家まで送っていくよ」と言っています。

「ウチにおいで」ではなく「送って行くよ」というあたりにその女性への控え目な想いが見てとれます。

3. Reno

1.を更に淡々とさせた様ないわゆるボス氏印のフォークソングです。しかし、控え目ですがストリングスがフューチャーされているせいか、そんなに土臭い感じはしませんね。

歌詞はとても卑猥です。娼婦との行為の一部始終とその虚しさ、愛なき行為は虚しさしか残りません。

4. Long Time Comin’

2.同様、ほどほどにスピード感のあるフォークロックです。ただこちらの方が軽快感・開放感があるので結構気に入っています。

歌詞は、不幸な生い立ちに対する長年の呪縛から解放された男の歌です。その呪縛からの解放や安堵は、愛する妻、我が子の誕生によりもたらされ、自分は親父の様にはならないと決意しています。

5. Black Cowboys

ボス氏印のフォークソングです。その弾き語り度は高く、ピアノとコーラスもフューチャーされていますがかなり控え目になっています。

歌詞は、訳詞の文字数もたっぷりな短編小説の様ですが、あまりピンと来ませんでしたね。母の温もりを感じながら育つも、やがて我が家に母の男がやって来てます。

しかし母の幸せは徐々に失われて行き、そして彼はその男の金をくすねて家を出て行ってしまいます。

6. Maria’s Bed

フォークロックですが一風変わっています。ボス氏のボーカルはファルセットで終始しています。

この様な唱法はこれまでにあったのかな?私の記憶には残っていなかったので結構驚きました。

べつに変ではないと思いますし、のんびりムードでリラックスして聴ける曲だと思います。

歌詞は観念的でよく分かりませんでした。とにかく彼にとって彼女のベッドで眠ることが唯一の救いの様です。

7. Silver Palomino

ボス氏印のフォークソングです。ほぼ弾き語りでメロディーも明瞭でなく、演奏も効果音的に使っている程度なので、歌詞が分からないと退屈かも知れません。

歌詞は、追悼歌で母を失った幼い子供二人に充てられています。銀色の美しい牝馬、バロミノと母の思い出になぞらえて勇気づけている様です。

8. Jesus Was an Only Son

バンドスタイルのフォークソングです。控え目ながらでもピアノ・オルガン・ドラムほかの演奏付きですとほっとしますし、BGMとして聴くことも出来ます。

歌詞はイエス・キリストとイエスの母を題材にしています。救世主誕生の喜びを歌っているものと解釈しました。

9. Leah

本作で一番ポップなタイプの曲です。イントロはアコギですがとても爽やかで軽快です。

凝った構成ではなく時間も3分ちょっとと小品に近い印象ですが、一服の清涼剤的な気持ちの良さがあって好きな曲ですね。

歌詞は、愛するリアと共に人生の価値を高めていきたいと願っている男の歌です。

10. The Hitter

7.同様、かなり地味なフォークソングで苦手なやーつです。ハッキリしないメロディのほぼ弾き語りで起伏もなく淡々と進行して行きます。

演奏についても、言葉は悪いですが添え物程度なのでBGMとして聴くのはしんどいでしょう。歌詞はエピソード系だけに英語が分からないのが悔やまれます。

歌詞は、母親に幼い頃に売られて?そこから逃げ出し賞金稼ぎのボクサーとしてそれなりに成り上がった男が久々に母親に会いに行き、これまでの自分の人生を語っています。

11. All I’m Thinkin’ About

6.同様、終始ファルセットで歌っているのですが6.の方はよく聴くとボス氏の面影が少しだけ残っていましたが、こちらの方はボス氏ではなく、まるでゲストボーカルの人が歌っているのかの様な印象です。

たとえボス氏のファンでも、予備知識なくこの曲を聴いたらボス氏が歌っている事におそらく気付かないと思えるほどです。

歌詞は、様々な街の様子や景色が目に映るが、何を見ようとも思っているのはおまえのことであり思わずにはいられないと歌っています。

12. Matamoras Banks

ボス氏印のフォークソングですが、穏やかでそれなりにメロディアスですので歌詞の内容が分からなくてもBGM的な聴き方は可能かなと思います。

いわゆる暗さはそんなに感じませんでしたので、本作の締めくくりの曲としては中々良いんではないでしょうか?

歌詞は、川を渡ってアメリカへ不法入国しようとするも川に流されて命を亡くした男の歌です。

肉体は滅んだが、せめて魂だけでも待っている人がいる川の堤防に辿り着きたいという男の無念さが溢れています。

以上、ブルース・スプリングスティーン『DEVILS & DUST』私的全曲レビューでした。ありがとうございました。

デビルズ・アンド・ダスト