佐野元春

佐野元春おすすめアルバム『COYOTE』2007【私的全曲レビュー】

今回の記事では佐野元春さんのアルバム「COYOTE」について書きたいと思います。現在もサポートを続けているザ・コヨーテバンドとの出会いとなった記念すべきアルバムです。


COYOTE(通常盤)

COYOTE  全体的な感想

COYOTE』2007年発表

1996年以降、前作の「THE SUN」までは主にホーボーキングバンドとともにレコーディングされていました。

しかし本作では一世代年下で元春リスナーであり、プロのバンドマンでもあるミュージシャンをサポートに抜擢した意欲作です。

コンセプトは、コヨーテという人物が旅をするというロードムービーの架空のサウンドトラックだそうです。

2004年、前作の「THE SUN」リリース時に音楽誌で「僕はメロディーを取り戻した」旨の発言をされていた記憶がありますが、本作ではさらにそれが進化した印象です。

収録されている楽曲もバラエティに富み過ぎることなく統一感があり、その後の佐野元春&ザ・コヨーテバンドの活躍を予感させるものが随所に溢れている様な気がしました。

COYOTE  各曲感想

1. 星の下 路の上

先行シングルにもなったシンプルでストレートなロックンロール。当時、「Oh! Yeah! Yeah! Yeah!, Hey! Hey! Hey!」なんてフレーズを佐野さんから聴くのはずいぶんと久しぶりだなぁと思いましたね。

ただ、前作「THE SUN」に収録されている「国のための準備」と同様、ちょっとシンプル過ぎるかなぁ?という物足りなさ、惜しい感じはします。

しかし「国のための準備」とは異なり、この曲はアルバムのオープニングを飾ることで勢いをつけてくれています。

2. 荒地の何処かで

佐野さんお得意のフォークロック。メロディーが秀逸です。また、佐野さんのファンには「瓦礫」と共におなじみの「荒地」や「ダンス素敵さBABY」というフレーズがニヤリとさせてくれるグッドソングです。

3. 君が気高い孤独なら

孤独な聴き手に寄り添ってくれる軽快なソウルナンバー。ストリングスにホーンにコーラスと、本アルバムの中で最も煌びやかで凝りに凝ったサウンドを聴かせてくれます。

歌詞は、少しスピリチュアルで分かりづらい感じはしますが、孤独な聴き手にそっと寄り添ってくれる前向きなものです。

4. 折れた翼

歌い出しから随所に登場する「LIVE ON」というフレーズは「生き続ける」という意味なので、永遠の別れとなってしまった人への懺悔や後悔、切実なる思いを歌っている様に感じました。ヒリヒリとした切なさを感じさせるバラッドです。

5. 呼吸

この曲は前曲と対になっている様な印象を受けました。前曲の対象者へ祈りを捧げる、結果的にそれは自分にとっての癒しにもなっているという、ある種の救済を感じさせるバラッドかなと思いました。

6. ラジオ・デイズ

元々はシンガーの金子マリさんへの提供された「最後のレイディオ・ショー- Radio Days」のセルフカバー曲。

ムーディーな大人の曲です。年月など過去への郷愁を感じさせる、ある意味「悲しきレイディオ」ですね。

7. Us

「笑顔になれたらいいな」「友達になれたらいいな」と日常的で平易で穏やかな言葉が続きますが、後半の「憎しみ・傷つき」にシリアスな背景が見てとれます。

当時、9.11以降、長引くイラク戦争が関係している様な気がしたのを覚えています。

また、クライマックスのサビが珍しく英語詩だったことも私が国際的な意味合いを見出してしまった要因かも知れません。それにしてもこの英語のサビは絶品です。

8. 夜空の果てまで

「愛の記しを見つけに行こうぜ」という平たく言えば人生の応援歌ですね。

とは言え、なんだかんだ言っても私はこの手の曲が好きですね。このアルバムの中で一番好きな曲は?と訊かれればこの曲だったりします。

サウンド的には「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」に通じる元気の良さ、活気を感じました。両曲ともにマーチ音楽的な印象を受けるのは私だけでしょうか?

9. 壊れた振り子

ミステリアスな印象の曲です。主人公は不安にさいなまれている様です。私は音楽的知識が乏しいのでよく分かりませんがR&Bでしょうか? ちょっと苦手なタイプの曲ですね。

歌詞は「気をつけろKID」と 暗示的で不穏な世相を反映している様です。

「国のための準備は出来てるかい?」と言われている気もします。

10. 世界は誰の為に

シングルでは佐野さんと深沼元昭氏と山口洋氏と藤井一彦氏がボーカルを分け合っていましたが、アルバムver.では佐野さん一人のメインボーカルとなっています。

私はこの曲のシャープなフレーズよりもノリを楽しんでいます。

ノリと言ってもノリノリな痛快さではなく、メロディアスで渋い大人のロックバンドのノリです。

11. コヨーテ、海へ

7分を超える大作ですが、かつての「ROCK’N ROLL NIGHT」の様なロックオペラ的展開はありません。

単調と言えば単調な曲なのですが、ひとたび聴き始めると飽きることなく最後まで聴けてしまう、そんな不思議な魅力を持った曲です。

その理由はメロディーの秀逸さはもとより、佐野さんの詩人としての能力が炸裂しているからにほかなりません。

歌い出しから最後まで個性的で印象的なフレーズが次々に登場します。

ただ「勝利あるのみ」と「SHOW REAL」の言葉遊び的な組み合わせは、個人的にはあまり好みではありませんが。

12. 黄金色の天使

曲調としては、2.「荒地の何処かで」と似た質感の曲ですが、こちらの方がよりフォーキーに感じます。

歌詞は、現実に悲観しながらも生きていくしかないという儚さを歌っている様です。

しかし聴き手を陰気な気持ちにはさせず、むしろ穏やかな気持ちにさせてくれるのはとても佐野さんらしいなと感じましたね。

以上、佐野元春おすすめアルバム『COYOTE』2007年作品【私的全曲レビュー】でした。ありがとうございました。

COYOTE(通常盤)