佐野元春

佐野元春おすすめアルバム『MANIJU』2017【私的全曲レビュー】

今回の記事は佐野元春さんのアルバム「MANIJU」についてです。2015年発表の「BLOOD MOON」以来2年という早いペースでのリリースです。アーチストとしての好調さが窺えます。

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MANIJU  全体的な感想

『MANIJU (マニジュ)』2017年発表

佐野さんの現在のサポートバンドであるCOYOTE BANDとの4作目の作品。人によってはアルバム「ZOOEY」を1作目と捉えている人も少なくありませんね。どちらでも良いこととは思いますが。

佐野さんいわく「これまでで最もポップなアルバム」と言っていたかと思いますが、佐野さんの言うポップの意味は、私なんかが思っているイメージととは異なる様な気がします。

大衆的で親しみやすさ全開という感じのアルバムではありません。もちろんそういった曲も収められていますが、同時に「あの人」というキーワードが何度も登場するなどシリアスで考えさせられる様な曲が何曲も収められています。

それでもどの曲もメロディーが秀逸なので、聴き手をブルーな気分にさせないのはさすがです。また、佐野さんのボーカルは全編を通して統一感・安定感があり、更に復調した様です。

アルバムジャケットは前作「BLOOD MOON」のメンバーが今作も担当したとのことで素敵なデザインとなっています。

MANIJU  各曲感想

1. 白夜飛行

アルバムのオープニングにふさわしいダンサブルな曲。1992年に発表したアルバム「SWEET16」に収められている「ミスターアウトサイド」に通じるものがある様な気がしないでもないです。

2. 現実は見た目とは違う

佐野さんの詩作能力を堪能できる曲。真の聖者と偽の聖者との対比が絶妙。ポエムリーディングとラップの中間の様な曲調。大サビがあれば尚良かったかなと。

3. 天空バイク

全体的には幻想的な佇まいのラブソング。しかし要所要所で鋭いギターが入ってきます。私の勝手なイメージでは彼女をバイクに乗せ天空を漂っている時に遭遇した稲妻。まるで二人の前途に苦難があることを暗示しているかの様というのは考えすぎでしょうか?

あと、佐野さんの「ラブ ラブ ラブ ラブ ラブ」、声に艶があって良い感じです。

4. 悟りの涙

ストリングスが印象的なソウルフルなナンバー。しかし詩の内容はシリアス。「ブルドーザーとシャベルを持って」というフレーズのインパクトは大きく、これは沖縄基地移設反対についての曲だ!と言う人や沖縄の海に住むジュゴンの気持ちを歌ったものだ!と言う人も。

いずれにしてもそのフレーズがあるためでしょうか? 私は心からリラックスしてこの曲を楽しめないのは少々残念です。

5. 詩人を撃つな

タイトルは私好みでとてもかっこいいですね。初聴の時はどんな曲なんだろう?と少々緊張したくらいです。でもいざ聴いてみると残った印象は薄かったです。

近年、安易?とも受け取れるタイトルが多めな印象がありましたが、こんなにカッコいいタイトルをつけるくらいですから、余程この曲に対する強い思い入れがあると思われますが、感性の低い私は未だにそれを見出せておりません。

6. 朽ちたスズラン

一言でいえば、プロテストフォーク。私的にはこのアルバムどころか、佐野さんのキャリアの中でも代表曲の一つとして数えたいくらいの名曲です。

これまでも「本当の彼女」や「希望」といったフォークソングがありましたが、私的にはイマイチ好みではありませんでした。しかしこういうフォークソングなら大歓迎です。

また、このアルバムには「あの人」という言葉が度々登場しますがこの曲では特に印象に残ります。更に「あの人の金と時間はやがて石になるだろう」ほか佐野さんの詩人っぷりには驚嘆させられました。

7. 新しい雨

2017年版 元春ロックンロール。終始、みんなぁ!とリスナーに呼び掛けて、とにかく前向き一直線な感じの曲です。

元来この手の曲は大好きだったはずなんですけど、歳を取ったのかあんまりピンと来ませんでしたね。賑やかな曲だなぁというより、やかましい曲だなぁと感じてしまいました。

8. 蒼い鳥

「サンチャイルドは僕の友達」にも通じる可愛らしい小品。「サンチャイルドは僕の友達」はアルバム「SOMEDAY」ではラストに配置されていました。しかしこの曲は場面転換的な意味合いを持たせたかったのか8曲目に配置されています。

ちなみに既出情報ですが、原案は2000年にリリースされたベスト盤的なアルバム「GRASS」に収録されていた「モスキート・インタールード」ですね。

それはアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」につながる東京でのレコーディングセッションにおいて生まれた一節のアイデアが発掘され、後に「GRASS」に収録されたものです。それに詩と曲を加え曲として完成させたものがこの「蒼い鳥」。

9. 純恋(すみれ)

このアルバムの代表曲といえる曲で往年のファンも大満足との声が多いですね。しかしこれまでの代表曲とは少し毛色は違います。

「SOMEDAY」や「YOUNG BLOODS」などでは人生の応援歌的な色合いでしたが、本作はタイトルの通り無垢な少年少女に向けてのラブソングに仕上がっています。

しかしリスナーの大半は中高年と思われ、私もその一人ですが何の違和感もなく楽しめます。

尚、この曲に対する世間の認知度はいつも通り低いですが、その分かつての「約束の橋」の様にタイムラグがあっての大ヒットの可能性を秘めている気がします。

10. 夜間飛行

1曲目の白夜飛行のダークな感じの別バージョン。私的にはなんとも印象が薄いので特に感想はありませんね。まあ、この曲を最終曲に持って来ていれば何らかの感慨が生まれたのかも知れません。

11. 禅ビート

ロックンロールのお手本と言っても良い出来で素直にカッコいいと思える曲です。詩・曲・アレンジ・ボーカル・演奏とすべてがイカしています。こういう曲をもっと量産して頂けたらうれしいですね。

12. マニジュ

このアルバムの最後を飾るタイトル曲。スローな曲ですがバラードとは一味違う不思議な魅力のある曲です。

全体を貫く幻想的な雰囲気に謎めいた「スタア」というキーワード、過去曲「ストレンジデイズ」の一節が登場したり、ビートルズぽさも感じられます。一言で言えば、聴けば聴くほど味が出るそんな曲ですね。

以上、佐野元春おすすめアルバム『MANIJU』2017【私的全曲レビュー】でした。ありがとうございました。

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