佐野元春

佐野元春おすすめアルバム『月と専制君主』2010【私的全曲レビュー】

今回の記事は佐野元春さんが2010年に発表した初のセルフカバーアルバム「月と専制君主」についてです。

佐野さんはライブでリアレンジした曲を披露する事が珍しくなく、時に原曲以上の出来と評されることも少なくありません。

その編曲能力の高さは折り紙つきで、ファンの間でもセルフカバー作品の制作は望まれていました。


月と専制君主

月と専制君主  全体的な感想

『月と専制君主』2010年発表

まずは何といっても選曲ですが、レアと言っても良いくらいの往年のファンでもあまり馴染みのない曲が何曲も選ばれています。

演奏は1996年「FRUITS」以来の盟友であり、佐野さんと同世代のホーボーキングバンドが担当しています。

彼らは佐野さん同様に60年代・70年代のR&Bやサイケやフォークなどに造詣が深く、そのあたりを考慮しての選曲、あるいは選曲ありきでのホーボーキングバンドの起用だったのかな?と想像しています。

また、アレンジだけでなく本作を制作するにあたって、かなりの曲で原曲の英語部分の歌詞が日本語に書き変えられています。

結果、アルバムの質感は統一されオリジナルアルバムの雰囲気すら感じます。

本作で楽曲の良さを改めて知ったものもありましたが、全体的には私が望んでいたものとは違いましたね。アルバムジャケットももう少し…

月と専制君主  各曲感想

1. ジュジュ

【原曲:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 1989年】

軽快なフォークロック的な原曲がモータウン風のソウルナンバーになった印象です。メロディや歌詞に変更はなく?、驚く様な冒険もしていないので違和感なく聴くことが出来ます。

アルバムのオープニングでいきなりビックリさせるのもアレなので、オープニングを飾るにふさわしい曲だと思います。

また、原曲は1989年と20年以上前の作品になりますがボーカルの質感もグッドです。

2. 夏草の誘い

【原曲:Cafe Bohemia 1986年】

原曲はストリングスのイントロで、はつらつとした爽やかな曲でしたが、この曲は爽やかさを保ちつつアコギ中心のやわらかな曲に仕上がっています。

本曲は原曲のイメージを損なわない、まさに別ver.と言えるでしょう。エンディングにストリングスが登場するのもグッドです。

歌詞は若干の変更が加えられています。「”言葉”を知らない小鳥のように」「いつでも”君のことが気になって”」など。

意図は分かりませんが聴き手を困惑させる様なものではないのでOKですね。

3. ヤングブラッズ

【原曲:Cafe Bohemia 1986年】

佐野さんいわくラテンロックだそうです。確かにラテン感はしますし、長編で細部まで錬りに練ってリアレンジされたんだなというのはよく分かります。

テンポは落としているもののメロディーや歌詞はほぼ原曲のままですので佐野さんの編曲能力の高さには感服します。

しかし、私にとって「ヤングブラッズ」は特別な曲なのでこのver.はあまりピンと来ませんでしたね。

原曲のアレンジはいわくつき?だったりしますが、本曲を聴くと「なに?アレンジ?そんなのどうにでも出来るんだぜ!」と主張している様な気がするのは多分私だけでしょう。

4. クエスチョンズ

【原曲:TIME OUT! 1990年】

原曲と異なり、何やら怪しげなムードが漂っています。くせになるというか、気付けば何度もリピートして聴いてしまう不思議な曲です。

余談ですが、本曲がアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌に似ていると指摘する人がいますが、そう言われて聴いてみると詩の世界観も全く無関係ではなさそうに思えて来るから不思議です。これまた私だけでしょうけど…

5. 彼女が自由に踊るとき

【原曲:TIME OUT! 1990年】

LOVE PSYCHEDELICOのKUMIさんがボーカルとして参加しています。彼女のクリアでハイトーンな声が加わることで、ブルージー感もあるセクシーなフォークロックに仕上がっています。本作のおすすめ曲の一つです。

6. 月と専制君主

【原曲:Cafe Bohemia 1986年】

アルバムタイトルチューンです。原曲は二部構成の様な凝った創りでしたが、本作では大幅に改編され流れる様なポップソングに生まれ変わりました。

特に後半はメロディーも一新され、新曲と言って良いくらいの変貌ぶりです。

チュッチュッチュールとまるで口笛を吹きながら闊歩しているかの様な軽快さがとても心地良いです。

7. C’mon

【原曲:Stones & Eggs 1999年】

原曲は当時聴いたはずですが特に印象には残っていませんでした。改めて聴いてみると思いのほか軽快なロックでユニークさもありました。

しかし本作ではテンポを落とし、原曲にあった中サビを廃止するなど全体的にブルージーな曲に仕上がっています。

8. 日曜の朝の憂鬱

【原曲:VISITORS 1984年】

原曲は「SUNDAY MORNING BLUE」。インパクトのあるピアノのイントロが印象的なバラッドでしたがアコギ主体の曲に変わりました。

タイトルは見ての通りでちょっと強引なくらいの日本語タイトルです。歌詞も「Sometime」は「時々」になど英語部分は結構日本語に書き変えられています。

「時々」という言葉は、佐野さんの曲では度々登場する言葉ですね。個人的には英語を日本語に置き換えてしまうのは好きではないですが、このアレンジでしたら「時々」という日本語の方がマッチしているとは思います。

また後半からはサックスが登場し、エンディングもサックスで終わりますが、聴き終わった後の後味が洒落た感じになりとても良いと思いました。

9. 君がいなければ

【原曲:THE CIRCLE 1994年】

アコギのリズムが印象的な曲です。94年発表時に聴いていたはすですが、当時私は若かったからかあまりピンと来ませんでした。

しかし本作で改めて聴くと、とてもしっとりとしていて今更ながらこの曲の素晴らしさに気付いた次第です。個人的には本作で一番のお気に入りです。

10. レインガール

【原曲:THE CIRCLE 1994年】

本作のver.はデビュー20周年時に披露されたワルツver.だと思います。原曲の疾走感とは異なり、ゆったりとした品の良いアレンジになっています。

近年ではオリジナルver.が披露されることもあり、私的には「アンジェリーナ」のロックバージョンとスローバージョンに匹敵するバージョンだと思っています。

以上、佐野元春おすすめアルバム『月と専制君主』2010【私的全曲レビュー】でした。ありがとうございました。

月と専制君主