佐野元春

佐野元春おすすめアルバム『ZOOEY』2013【私的全曲レビュー】

今回の記事は佐野元春さんのアルバム「ZOOEY」についてです。オリジナルアルバムとしては2007年発表の「COYOTE」以来6年ぶりの作品です。曲調は様々ですが一曲一曲の完成度は高く、演奏も若々しく快心の作品です。


ZOOEY

ZOOEY  全体的な感想

『ZOOEY』2013年発表

前作「COYOTE」以来の6年ぶりのオリジナルアルバム。演奏は「COYOTE」に参加したメンバーからなるTHE COYOTE BANDが努めています。

6年ぶりというとかなりのインターバルですが、その間セルフカバーアルバムやアニバーサリー盤がリリースされていましたし、私も歳をとったせいかいつの間にかの6年でした。

佐野さんいわく「ZOOEY」はギターロックです!と言っていた記憶がありますが、正直それほどでもないなという感じはします。

バラード以外は全編ゴリゴリのギターロックを期待してしまいました。

それでもアルバム全体の印象としては、バンドサウンドということもあってか、とてもまとまりが良く感じられました。

ZOOEY  各曲感想

1. 世界は慈悲を待っている

モータウン調の軽快なポップソング。セルフカバーver.の「ジュジュ」や「君が気高い孤独なら」の系列の曲でしょうか?

この3曲のなかでは私の好みには一番合ってますね。派手さはないですが歌詞もサウンドも開放感があり心地良いです。

YouTubeで公開された元春TVショー#001によると、この曲のギターのリフは佐野さんが生み出したもので、COYOTE BANDのメンバーが驚愕するほどにオリジナリティーの強いものだそうです。

その証拠というわけではないですが、みなさんでこのリフを練習するシーンも公開されています。

佐野さんはこのエピソードのことを「世界は慈悲を待っている事件」と呼び、この「事件」によって佐野さんとメンバーとの間にわずかに残っていた境界線が取り除かれた的なことを仰っていました。

また同番組で、大井’スパム’洋輔氏はこの曲が一つの転機になったと言い、高桑圭氏は2コード構成ながら普通たどり着かない構成と言い、深沼元昭氏はこのリフは発明と言うなど、本曲の知られざる重要性を知ることが出来ました。

そういった意味では本曲はアルバム先行シングル第2弾ですが、実質的には佐野元春&THE COYOTE BANDのデビューシングルと言っても良いかも知れません。

2. 虹をつかむ人

ベタな言い方になりますが人生の応援歌ですね。フィル・スペクター的なアプローチをされているそうです。

しかし、いかにもな、誰が聴いても分かるであろうウォールな感じではないせいか、どの辺がフィル・スペクター的なのか知識の浅い私にはわかりませんでした。

歌詞は全般に素晴らしいのですが、特に「誰も君のブルースを歌ってはくれない」の一節には現在でもグッと来てしまいます。

ただ、アコギメインで最初から最後まで同じトーンで進行していくので少々地味さを感じます。

大サビを入れるなり、もっとサービス大盛りなアレンジにしてくれていたら「SOMEDAY」に匹敵する曲になったのではないか?と思うのは私だけでしょうか?

3. ラ・ヴィータ・エ・ベラ

本作先行シングル第1弾の軽快で適度なスピード感のあるロックンロール。震災を思わせるフレーズがありますが、「君が愛しい、理由はない」「~この先へもっと」と前向きなメッセージを聴かせてくれます。

しかし私はこの曲には佐野さんのパーソナルな感情、気持ちも新たにこれからCOYOTE BANDと共に歩んでいくんだというある種の決意表明的なものを感じました。

そういう意味では本曲は1.と共に佐野元春&THE COYOTE BANDのデビューシングルだと勝手に思っています。アレンジも煌びやかでとても素敵な曲です。

4. 愛のためにできたこと

スローなラブソングでしっとりとしたムーディーなサウンドです。

「愛してると君は言う、でも信じてるとは決して言わない」と佐野さんのラブソングにしては珍しく、その女性に対してきつめのフレーズが登場します。

しかし「愛のためにやってくれたことは忘れないよ」とちゃんとフォローも入っています。

「バルセロナの夜」は「時々二人は~~愛してる気持ちはいつも変わらない」ととてもハートウォーミングな曲でしたが、続けてこの曲を聴くとなんだかビミョーな気持ちになってしまいます。わざわざ続けて聴く必要はありませんが…

5. ポーラスタア

このアルバムの代表曲の一つで、COYOTE BAND作品の中でも代表的な曲。佐野さんのメロディーメーカーとしての才能が炸裂しています。

歌詞も前向きでスピード感もあり、展開に起伏もあるので人気曲であるのも頷けます。

しかし私的に本曲は、ライブDVD「2018「MANIJU」ツアー・ファイナル 東京ドームシティ・ホール」でのライブテイクが最高だと思っています。

6. 君と往く道

愛する人との散歩という日常の風景を歌ったおだやかなポップス。くせがないので聴きやすいとは思いますが、特徴的でもないので繰り返し聴きたいという曲ではありませんね。

アルバム「THE SUN」の「希望」の様に日常が詳細に描かれていればそうでもなかったかも知れませんが。

7. ビートニクス

ズンズンズンズンというリフが印象的なヘビーなギターロック。このタイトルをジャケットで見た時かなり興奮したのを覚えています。

歌詞としては「行けば分かるさぁ!、迷わず行けよォ!」的などこかで聞いたいたことのある威勢の良いセリフを思い起こさせる内容となっています。

タイトルのインパクトが強く、私自身妄想を膨らませ過ぎた感じはありましたが内容的には非常にカッコいいロックとなっており、私のお気に入りの1曲でもあります。

8. 君と一緒でなけりゃ

洒落た雰囲気のソウルナンバー。と言っても歌詞の内容は「人間なんてみんなバカさ」「笑っている恥知らずたち、眠っている権力者たち」と、とても政治的で絶望的ですらあります。

しかし先に記した通り、洒落た雰囲気に包まれておりますので、意外とリラックスして聴くことが出来ます。またその様にサウンドデザインした佐野さんはさすがだなとも思います。

9. 詩人の恋

はかなくも悲しい愛の歌。このアルバムを代表する曲の一つです。その歌詞の内容の具体性から、その背景・シチュエーションについてファンの間でもかなりの関心を集めました。

どうやら結論的には、長期にわたり深刻な病に侵された方の病室の風景というところに落ち着いた様ですね。

また、死別の悲しみだけでなく、悲しみと決別し旅立ちまで描いているところもこの曲が人気を集めている理由なのかもしれません。

10. スーパー・ナチュラル・ウーマン

メロディアスなロックロール。この曲も「ポーラスタア」と同様、佐野さんのメロディーメーカーとして才能がいかんなく発揮されています。

歌詞は一言で言えば女性賛歌。生命を生む女性は宇宙。それだけで男性はもうお手上げです。如何ともしがたい現実。

後半の佐野さんのファルセットも美しく最高の楽曲なんですけど、桑田さん的なアプローチ(歌詞の文字とは異なる読み)が無ければ…歌詞カード通りに「刹那」で良いと思うんですが。

アレがあるお陰で聴くのをなんか躊躇してしまいます。ただ、アレがあるお陰で生命の誕生云々までイメージが広がったような気もしますので難しいところです。

11. 食事とベッド

スカとスライドギターが印象的な軽快なロック。歌詞はどことなくユーモラスですがサビでは流麗なメロディにのせて切実な言葉で問いかけてきます。

「あとどれくらい信じていけば君に会えるだろう」

それは相手の女性をまだ信じ切ってはいませんと言っているかの様にも解釈できます。だとすると4.の「愛してると君は言う、でも信じてるとは決して言わない」と関連付けたくなって来ます。

しかしまあ、メロディーとアレンジが素晴らしいのでとても気持ちよく聴けます。

12. ZOOEY

一定のフレーズ形式で最後まで通すヘビーで骨太なギターロック。「経験の唄」でみせたスタイルに近く、内容は「SHAME 君を汚したのは誰」を思い起こさせ、かなりシリアスな印象です。

シンプルな曲なので最終曲としては何かクライマックス的な仕掛けがあれば尚良かったなぁとは思います。

以上、佐野元春おすすめアルバム『ZOOEY』2013【私的全曲レビュー】でした。ありがとうございました。

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